かつては、腰椎麻酔と言って、翌日まで下半身が麻痺した様になる麻酔で当時は入院が必要でした。その後、現在は、処置する血管の周囲に薄いが大量の麻酔を注入する膨潤TLA麻酔が一般的です。これは、美容整形での脂肪吸引等に開発された方法です。しかし、この注射自体、下肢のいくつかの部位に針を刺すので、痛みを伴います。一般的には、この針の痛みを静脈麻酔などで眠った状態にしてカバーします。しかし、この場合でも深く眠った様になるだけなので、人によっては針を刺した時に体を無意識に動かして処置がやりにくくなる場合もあります。この体動をなくす為に更に深い麻酔にすると今度は、無呼吸症候群の様に舌根沈下で呼吸が出来なくなります。
→その為、当院では、大腿神経・大伏在神経ブロックを行います。これは、患肢の2か所に採血する程度の針で、局所麻酔薬を3~10㏄程注入します。これだけで、処置する部位へTLA麻酔の針を刺しても痛み自体が感じなくなり、会話しながらでも処置が可能です。麻酔の効果が少ない場合でも、短時間作用の静脈麻酔を少量追加するのみで、痛みが減じて、体動や舌根沈下のリスクが少なくてすみます。当然、吸入麻酔等の追加の麻酔薬も不要で、術後ボーとなる事も少ないです。これにて、人によっては意識を保って声も聞こえるような状態を維持する場合もあれば、緊張しやすい方はいびきをかいて眠るまで意識を落としておくなど、患者さまの状態に合わせて最適な状態にコントロールできます。
この麻酔は、採血する程度の針で2ヵ所穿刺するだけで、下肢の消毒をしている間に効果が出て、痛みを感じなくなります。この、最初の2ヵ所の注射の部位には表面麻酔クリームを塗って、更に、注射直前に短時間作用性の静脈麻酔で痛みを減じます。